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パソコン通信

  • Posted by: kenschool
  • 2010年11月 9日 10:02
  • その他

Venusチームです。


「インターネットによって、人々が場所や時間を問わず

互いにコミュニケーションできるようになった。

マスメディアのような一方通行ではなく、双方向のメディアが初めて誕生した」

--などと言われることがよくあります。


たしかにインターネットの特徴を端的に表していますが、

厳密にいえば、これはインターネットに限られた話ではありません。


日本で商用インターネットサービスが一般化しはじめたのは

1990年代も半ばになってからのこと。
 

それより遡ることおよそ10年、1980年代半ばから1990年代半ばに

「パソコン通信の時代」がありました。 
 

パソコン通信とはどんなサービスだったのかというと、

電話回線経由で遠隔地にあるホストと接続し、

メールや掲示板で互いにコミュニケーションを行うというものでした。
 

こう書くと、インターネットのウェブやメールと大差ないように

思えるかもしれません。 
 

けれどインターネットとパソコン通信の間には、様々な違いがありました。
 

第一に文字(テキスト)ベースのサービスだったということがあります。
 

この図は、当時商用パソコン通信の最大手「NIFTY-Serve」の画面イメージです。

ニフティサーヴ

メニューがすべて文字で表示されています。

このメニューをマウスでクリックして……と言いたいところですが、

そうではありません。
 

画面の下に「>」がありますが、これはプロンプトです。
 

ここにキーボードで、番号やコマンドを入力するわけですね。
 

コマンドを入力すると、その結果が表示され、さらに次の操作のために

コマンドを入力して…というように、対話型の操作を基本としていました。
 

WindowsのコマンドプロンプトやLinuxのシェルを想像してみてください。
 

当時は、コンピュータの技術者や専門家でもない一般のユーザーが、

キーボードを叩いて操作していたのです。

(もっとも、こうした操作を自動化するソフトやGUI化するソフトもあったので、

必ずしも毎度コマンドを叩いて操作する必要はなかったのですが。)


さらにネットワーク技術の観点から見ると、現在のインターネットのような

TCP/IPプロトコルを使用することはなく、無手順通信が基本でした。
 

つまりエラー検出や誤り訂正もせず、

文字データを送りっぱなしといった原始的な通信方法です。
 

仮に伝送の際にデータがうまく送受信できなかった場合、利用者自身が

再度やり直すということで、いわば人間が誤り訂正を担っていたわけです。
 

また通信速度は現在の基準からすると驚くほど低速(2400bps程度)でしたが、

重いデータを扱うことが少なかったため、それでも問題ありませんでした。

(厳密には、画像やプログラムなどのバイナリデータ転送用にXMODEM等の

プロトコルを使うことはありましたが)


ネットワーク技術の観点で見ると、ずいぶんと簡素な印象ですが、

サービスはけっこう多彩でした。
 

さきほどのNIFTY-Serveを例に挙げると、次のような機能がありました。 

  • 電子メール
  • 掲示板
  • フォーラム
  • チャット
  • オンラインショッピング
  • ニュース
  • 新聞記事データベース

なかでも中心的な存在だったのは「フォーラム」です。
 

フォーラムとは、テーマ別に互いにメッセージを書き込み合う

掲示板のようなサービスです。
 

参加者の多くはハンドルネームを使っていましたが、会員固有のIDもあり、

まったくの匿名というわけではありません。


また各フォーラムには、規約やルールがあり、「シスオペ」と呼ばれる管理人が

フォーラムの運営を担っていました。
 

こうしたこともあってか、フォーラムでやりとりされるメッセージは、

いたずら投稿や一行だけの無意味なコメントなどはあまりなく、

一定の水準が保たれていました。
 

もちろん口論から喧嘩が巻き起こることも皆無ではなく、裁判沙汰にまでなった

ケースもあったので、決して理想郷というわけではありませんでしたが。


とはいえ、たいていのフォーラムはそれなりの節度が保たれていましたし、

活発なフォーラムでは、その道のセミプロや専門家レベルの助言を

得られることもあり、情報源として有用な場所でした。
 

パソコン通信を舞台にした小説や映画・ドラマが作られることもありました。
 

最盛期にはNIFTY-Serveの会員数が200万人規模になることもありました。


しかし諸行無常、栄枯盛衰が世の習わしというべきか、インターネットの隆盛と

ともにパソコン通信は衰え、やがて姿を消していくことになります。
 

世界中と繋がることのできるインターネットの前に、会員限定のクローズドな

パソコン通信はやはり色褪せて見えたということでしょうか。


パソコン通信の商用サービスは徐々に終了し、

利用者の多くはインターネットでのウェブやメールに移行していきました。
 

技術の進展とともにパソコン通信が衰退したことは、

仕方がないことだったのかもしれません。
 

しかしフォーラムなどで蓄積された多くのコンテンツは、

媒体を問わず価値を持つはずです。
 

パソコン通信でやりとりされていた多くの情報はどうなったのでしょうか?


結論からいえば、それらの多くはもはや散逸してしまっています。


中にはユーザー個人やコミュニティで保存され、ウェブに移された記録もありますが、

パソコン通信事業者がそれをコンテンツとして維持することはなかったのです。


事業者が提供していたのは、コミュニケーションの場であり、

「プラットフォーム」に過ぎず、コンテンツは会員のものだった、

ということなのかもしれません。
 

あるいは単に、事業者自身がコンテンツの価値を

十分に把握しきれていなかったのかもしれません。


インターネットの時代にあっても、ウェブにおいて利用者を引きつけるのは、

プラットフォームなのか、それともコンテンツなのか。
 

使いやすいコミュニティシステムを開発し、それを世の中に提供したとしても、

それよりももっと使いやすいものが出てくれば、

ユーザーは徐々に移行してしまうかもしれません。
 

一方、面白いコンテンツを持つサービスが、ユーザーを増やし、

さらにシステムが改良されることもあります。


単なる懐古趣味ではなく、これからのウェブやインターネット上を

考えるためのヒントがかつてのパソコン通信から得られるような気がします。 

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